成年後見制度の全貌 ~判断能力低下に備える具体策~(シリーズ第2回)

認知症や知的障害などによる判断能力の低下は誰にでも訪れるリスクがあります。大切な家族や自分自身の財産を守るために、成年後見制度を理解しておくことは非常に重要です。本シリーズ第2回では、成年後見制度とは何か判断能力低下の影響、成年後見人の役割などについて詳しく解説します。

判断能力が低下することは、日常生活や財産管理において深刻な問題を引き起こします。成年後見制度は、こうした状況に対処するために設けられた法律制度です。この制度を利用することで、家族や指定された第三者が本人の財産を適切に管理し安心して生活を送ることが可能になります。この記事では成年後見制度の概要とその重要性について詳しく見ていきます。

判断能力低下の危険

人間は日々、多くの判断を下しながら生活しています。ある研究によると人は1日に約35,000回もの意思決定を行っていると言われています。しかし、認知症などで判断能力が低下すると、これらの意思決定が難しくなります。例えば、日常の買い物や銀行での手続きなど基本的な活動が困難になり、最終的には他者の支援を必要とすることになります。

誰のための後見人か

成年後見人は、判断能力が不十分な本人のために存在します。本人の生活を支え財産や権利を保護するために、家族や信頼できる第三者が後見人として選ばれます。後見人は、本人の意思を尊重しつつ最善の利益を追求することが求められます。

成年後見制度の具体例

成年後見で動かせる財産とは

成年後見人は、本人の財産や権利を保護し、適切に管理する役割を担います。具体的には、銀行口座の管理、日常の支払い、不動産の管理などが含まれます。例えば、家賃の支払いや生活費の管理、医療費の支払いなど日常生活に必要な支出を適切に行います。また、本人の生活環境を整え医療や福祉サービスを受けるための手続きを行うことも重要です。ただし、成年後見人には財産運用やマンション経営、生前贈与で家族に財産を残す手助けといった行為は認められていません。これらの行為は本人の財産を減らすリスクが伴うためです。

本人を守る後見人

成年後見人は、本人の利益を最優先に考え財産や権利を守る役割を果たします。後見人は、家庭裁判所によって選任され定期的に業務報告を行う義務があります。また、後見人が不正行為を行わないように監視体制も整備されています。

制度利用の実際

家族も後見人になれるか

成年後見人には、家族が選任されることもあります。ただし、家庭裁判所が後見人の選任を行うため、家族であっても適任と判断されなければ選任されないこともあります。後見人の選任に際しては、本人の福祉や利益を最優先に考慮し、公平で適切な判断が求められます。

資格が必要か

成年後見人には特別な資格は必要ありません。しかし、法律や財産管理に関する知識が求められるため、弁護士や司法書士、行政書士などの専門職が後見人として選任されることもあります。

一方で、後見人になれない欠格事由があります。例えば、以下のような人は後見人になることができません。

  • 未成年
  • 家庭裁判所から解任された後見人
  • 破産者で復権していない人
  • 本人に対して訴訟を起こした人
  • 現在行方不明の人
  • 任務に適していない理由がある人
  • 不正行為や不行為が認められる人

さらに、利害関係のある人が後見人になることは避けたほうが良いです。これは、後見人が本人の利益を最優先にするべきだからです。利害関係があると公平な判断が難しくなる場合があります。

制度の利用にあたっての注意点

法定後見と任意後見の違い

成年後見制度には、「法定後見」と「任意後見」の2つの種類があります。法定後見は、すでに判断能力が低下している場合に、家庭裁判所が後見人を選任する制度です。一方、任意後見は、判断能力があるうちに自らの意思で後見人を選び、将来に備える制度です。任意後見契約は、公証人の立会いのもとで作成され、将来、判断能力が低下した際に発効します。

成年後見で気を付けるべきことは

成年後見制度を利用する際には、いくつか注意すべきポイントがあります。まず、後見人が本人の意思を尊重し最善の利益を追求することが重要です。後見人には定期的な業務報告が求められるため、透明性と責任感を持って業務を遂行する必要があります。

また、後見人が行えることと行えないことを理解することが大切です。例えば、後見人は財産運用を依頼されたり、マンション経営を行ったりすることはできません。生前贈与で家族に財産を残す手助けもできません。これらは、本人の財産を減らすリスクが伴う行為であり、成年後見制度の目的である「本人を守ること」に反するためです。

さらに、後見人の報酬についても視野に入れておく必要があります。後見人は業務に対して報酬を受け取ることができますが、その費用をどのように捻出するかを事前に考えておくことが重要です。

また相続人と後見人の立場が重なると利害が対立する場合があります。遺産相続時に後見人と相続人が利害相反となり遺産相続が骨肉の争いに発展する可能性もあります。これを避けるためにも後見人は慎重に選任されるべきです。

以上がシリーズ第2回「成年後見制度とはどんな制度か」の記事です。次回は、具体的な成年後見制度の手続きや利用事例について掘り下げていきます。お楽しみに!

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この記事が成年後見制度をについて考えるきっかけになれば幸いです。

行政書士石川将史事務所