
実習生を引き続き雇用したい企業様へ
「技能実習を真面目に終えてくれたし、うちでこのまま働いてほしい」
介護現場ではそう考える企業様も多いのではないでしょうか。
しかし、技能実習から特定技能(介護)への在留資格変更には、企業側にも一定の準備が必要です。
本記事では、介護分野に特化して、移行の流れと注意点、行政書士がサポートできる内容についてわかりやすく解説します。
特定技能(介護)の要件と制度の特徴
介護分野で「特定技能1号」の在留資格を取得するには、以下の要件が必要です。
- 技能実習2号を良好に修了している(または国外から直接来日)
- 介護分野の「技能評価試験」および「日本語試験(N4以上)」に合格している
- 適切な雇用契約が結ばれており、支援体制が整っていること
なお、介護分野では必ず「支援計画」の実施が義務づけられており、支援を企業が自社で行うか、登録支援機関に委託する必要があります。
移行には会社側の準備も必要です
特定技能に移行する際、企業側で必要な主な準備は次のとおりです。
- 特定技能用の雇用契約書の作成
- 外国人支援計画の作成・実施(自社または登録支援機関)
- 会社概要書・支援体制の説明資料
- 決算書・納税証明などの整備
- 在留資格変更の申請(行政書士が代行可能)
登録支援機関との違いとは?
登録支援機関は、特定技能外国人に対して、次のような支援を代行する外部機関です。
- 入国時の送迎、住宅確保支援
- 生活オリエンテーションの実施
- 日本語学習支援
- 相談・苦情への対応
- 行政手続きへの同行 など
これらの支援は行政書士が行うことはできません。
ただし、企業が「自己支援」を選択する場合には、支援計画書を正しく作成する必要があり、行政書士がその書類作成支援を行うことができます。
行政書士がサポートできること

行政書士は、次のような業務を通じて企業様の負担を軽減します。
- 支援計画書や雇用契約書などの必要書類の整備支援
- 出入国在留管理局への在留資格変更申請(取次可能)
- 企業と外国人本人の間の調整支援
- 登録支援機関を利用する場合の情報提供
特定技能の制度や申請要件は煩雑ですが、専門家に任せることでスムーズに進めることが可能です。
制度が変わるって聞いたけど大丈夫?
現在、政府は技能実習制度を廃止し、「育成就労制度」への移行を2027年頃に予定しています。
しかし、特定技能1号の制度は当面存続します。
むしろ育成就労から特定技能への移行ルートが制度的に強化される予定であるため、現在の制度のもとで移行支援を行うことに問題はありません。
介護現場でよくある課題:日本語力への不安
介護現場の関係者からは、次のようなお話も伺います。
「在留資格を取って来日されたけれど、日本語でのやりとりが難しく、業務にスムーズに入っていただくのが難しい状況だったため、別の施設をご案内したことがある」
これは、受け入れ側の施設が現場の状況をふまえて判断されたケースです。職業紹介行為にはあたりませんが、制度運用を考える上で重要な気づきを与えてくれる実例です。
ただし、実際に別の施設で勤務を始める場合、現在の在留資格の種類によっては「在留資格変更」や「所属機関の変更申請」が必要になることがあります。
特定技能1号のように、所属先と在留資格が紐づいているケースでは、入管への届出や手続きが伴う点にご注意ください。
特定技能(介護)では、試験の合格が即戦力を意味するわけではありません。
面接時に実際のコミュニケーション力を確認することや、入職後の日本語学習支援体制を整えることが大切です。
制度根拠に基づいた運用ポイント(2025年4月改正対応)
介護分野における特定技能制度は、2025年4月に最新の改正が加えられ、以下のような運用が明確化されています。
技能評価の免除条件
- 「介護職種・介護作業」の技能実習2号を良好に修了した場合、介護技能評価試験と日本語試験の双方が免除されます。
- EPA介護福祉士候補者として4年間の研修を修了した場合も同様に免除対象です。
受入れ可能な業務と施設
- 身体介護(入浴・排せつ・食事など)が中心で、付随業務も従事可能です。
- 原則として、介護福祉士国家試験の実務経験として認められる施設に限り、受入れが可能です。
訪問介護に従事させる際の注意点
- 初任者研修の修了が必須です。
- 責任者の同行による訓練、キャリア計画の策定、ハラスメント防止措置が求められます。
企業が特に講じるべき体制
- 日本語学習支援や研修受講の促進
- 「介護分野における特定技能協議会」への協力
- 法令遵守や転職支援、治安リスクに対する情報共有
制度上の要件は年々厳格化していますが、正しい準備と支援体制が整っていれば、安心して外国人介護人材を受け入れることが可能です。
※本記事は、出入国在留管理庁が公表する 「介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領(令和7年4月改正) に基づいて構成しています。
特定技能で従事できる介護業務と施設について
特定技能(介護)で来日した外国人の方が実際に働ける内容や施設には、いくつかのルールがあります。
1. 基本的な従事業務
まず、従事できる業務は次のようなものです:
- 身体介護(入浴、排せつ、食事など)
- それに付随する業務(物品の補充、掃除、掲示物の管理など)
これらは「施設介護」「訪問介護」どちらの場面でも共通して行われる業務です。
2. 従事できる施設の種類
働ける施設には一定のルールがあります。原則として、介護福祉士国家試験の実務経験として認められている施設に限られます。
つまり、以下のような通所系・施設系の介護事業所が主な対象です:
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 通所介護(デイサービス) など
3. 訪問介護(ホームヘルプ)での受け入れについて
訪問介護にも従事することは可能ですが、さらに特別な条件を満たす必要があります。
具体的には:
- 介護職員初任者研修以上を修了していること
- 一定期間、責任者等が同行して実地訓練を行うこと
- 訪問業務に入る前に、しっかりと業務内容の説明や本人の意向確認を行うこと
- ハラスメント相談窓口の整備、ICT(タブレットなど)を活用した支援体制の整備など
訪問介護は利用者のご自宅に伺うため、より高い日本語力や判断力、安全配慮が求められるのが特徴です。
そのため、受け入れを検討している事業者様は、制度上の条件をよく確認することが大切です。
まずはお気軽にご相談ください
「うちの実習生も対象になるの?」「登録支援機関ってどうやって探せば?」
そうした段階でも問題ありません。初回相談は無料です。
Zoom・訪問対応も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
特定技能(介護)は制度の変化が多く、要件も細かく定められています。
現時点ではすべてを把握しきれていない分野もございますが、都度、最新の法令・行政通知等を確認の上で、確実な対応を心がけております。
相談内容に応じて、必要な情報を調べ、柔軟に対応いたしますので、どうぞ安心してご相談ください。
まとめ
特定技能(介護)への移行には、企業側の準備と理解が不可欠です。
行政書士は、複雑な申請や書類整備をサポートするパートナーとしてお役に立てます。
制度が複雑で不安なことも多いかと思いますが、一つひとつ丁寧に確認しながら進めてまいりますので、どうぞ安心してご相談ください。