
遺言書があっても死後の手続きはお願いできない?
「遺言書を書いておけば、すべて安心」と思っていませんか?
実は、遺言書には限界があります。
葬儀の手配や役所への届出、病院費の支払いなど、亡くなった後の手続きは遺言書だけでは対応できません。
それを補うのが「死後事務委任契約」です。
遺言書と死後事務委任契約の違いとは?
以下の表で、両者の違いを整理してみましょう。
項目 | 遺言書(+執行者) | 死後事務委任契約 |
---|---|---|
相続の分け方 | ✅ 指定できる | ❌ 対象外 |
遺言執行者の指定 | ✅ 可 | ❌ 不可 |
預金の解約 | ✅ 遺言にあれば可能(執行) | ❌ 原則できない(銀行が遺言書を求める) |
葬儀・納骨・火葬の手配 | ❌ 対象外 | ✅ 対応可能 |
電気・水道の解約 | ❌ 対象外 | ✅ 対応可能 |
病院費・家賃の支払い | ❌ 対象外 | ✅ 委任内容により可 |
行政・病院への届出 | ❌ | ✅ 死亡届など委任で対応 |
このように、遺言書は主に「財産の分け方」に関する書類です。
それ以外の事務処理は「死後事務委任契約」でカバーする必要があります。
死後事務委任契約とは?

死後事務委任契約とは、亡くなった後に必要な各種手続きを第三者に委任する契約です。
次のような内容を含めることができます。
- 葬儀・火葬・納骨の手配
- 病院への支払い・公共料金の解約
- 住まいの整理・家賃支払い
- 行政機関への届出(死亡届など)
契約は公正証書で作成するのが一般的で、行政書士がサポート可能です。
相手は家族・友人・信頼できる専門職のいずれでもかまいません。
死亡届の提出は家族以外でも可能?
死亡届の届出人は、戸籍法第87条で「同居の親族」「同居者」「家主・管理人」などと定められています。
また、「後見人」「任意後見受任者」なども対象となっており、法定の届出人以外が提出できるケースもあります。
実務上では、親族がいない場合や特別な事情がある場合、死後事務委任契約を受けた行政書士などが、本人の意思に基づいて届出を行うことが自治体によって認められることもあります。
ただし、これは法律に明記された権限ではなく、あくまで本人の意思に基づく委任としての位置づけです。
そのため、提出を希望する場合は、事前に市区町村役場へ確認することをおすすめします。
なお、死亡届の届出人について詳しくは、戸籍法第87条(e-Gov法令検索)をご確認ください。
費用と支払い方法
死後事務委任契約にかかる費用は次のとおりです。
- 契約書作成費用:3万円前後〜
- 手続きごとの費用:内容により異なる
ポイントは「自分の財産から支払うように指定できる」こと。
これにより、家族に金銭的な負担をかけることなく、必要な手続きが行えます。
どんな人におすすめ?
死後事務委任契約は次のような方に特におすすめです。
- 単身で暮らしており、身近に頼れる家族がいない
- 相続人とは疎遠で、自分の希望に沿って手続きを進めてほしい
- 友人や行政書士など、信頼できる第三者に託したい
ご自身の希望を形にする「備え」として、元気なうちからの準備が大切です。
ご相談の流れ
当事務所では以下の流れでご相談を承っています。
- ご本人様とのヒアリング(対面・オンライン)
- ご希望に沿った契約内容のご提案
- 遺言書との併用プランもご案内
- 公正証書の作成支援、証人手配も可能
まとめ
遺言書があっても、死後の手続きまではカバーできないことが多いのが実情です。
死後事務委任契約を併せて準備しておくことで、葬儀や公共料金の解約など、遺された方の負担を大きく軽減できます。
「まだ早い」と思う段階からこそ、元気なうちに内容を知っておくことが安心につながります。
一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
行政書士石川将史事務所では、遺言書と死後事務委任契約のセット作成にも対応しております。
お一人おひとりの状況に合わせて、丁寧にお力になりますので、どうぞお気軽にご相談ください。