終末期における医療の現実は、家族にとっても本人にとっても非常に過酷なものです。病院に入院し、これ以上は助からないことが分かっていても、医者は治療を止めることができない状況に直面することがあります。このとき、家族に対して「延命治療をやめますか、続けますか?」という重い質問が投げかけられるのです。
家族への重圧
延命治療を続けるかやめるかの決断を迫られた家族の重圧は計り知れません。当の本人はもう話すことができず、意思の確認もできない状態で、母や父を死なせてくださいという決断を下す重圧は、想像以上に重いものです。「もっと生きたかったのではないか」「延命治療なんて望んでいなかったのではないか」といった感情が消えることなく残るかもしれません。このような後悔に似た感情が、家族の心に深く刻まれることを避けるための方法の一つがエンディングノートです。
エンディングノートの役割
エンディングノートは、元気なうちに延命治療を望まない意思を記しておくための重要なツールです。これにより、決断を下す遺族が後悔の念を抱かなくてもよくなるかもしれません。自分が死なせたという罪悪感を家族に抱かせないためにも、自分のためだけでなく、大切な家族のためにエンディングノートを残しておくことが重要です。
決断の揺らぎと延命治療
入院中の患者が苦しそうに見える場合、「楽にしてあげよう」と思っていても治療で少しでも回復が見られると「生きてほしい」と願うのが人間の自然な感情です。
知人の看護師の方から聞いたお話になりますが、回復の見込みがなくても「ご飯が食べれた」「立ち上がった」など一時的な回復をみた後となると「やっぱりもう少し生きていてほしい」と家族の心が揺らいでしまう、ということがあるそうです。患者さんやその家族も、入院時の考え方が治療の過程で変わってしまうということもよくに目にするそうです。
このような葛藤を毎日感じる家族にとって、エンディングノートに記された意思があればその負担を軽減できるかもしれません。
エンディングノートの法的効力
エンディングノートに記された内容は法的な拘束力を持つわけではありませんが、遺族や医療従事者に対して本人の意思を伝える重要な手段となります。医療現場では家族の意見を無視して本人の意思を優先することはありませんが、エンディングノートがあれば本人の希望に沿った医療を提供するための貴重なガイドラインとなります。
エンディングノートを書く際のポイント
エンディングノートを作成する際には、以下のポイントを押さえておくと良いでしょう。
- 延命治療の意思:延命治療を希望するかどうか具体的な希望を記載しておく。
- 医療代理人の指定:自分が意思表示できない場合に備え信頼できる医療代理人を指定しておく。
- 臓器提供の意思:臓器提供の意思がある場合その旨を明記しておく。
- 葬儀や埋葬の希望:葬儀の形式や埋葬の方法についての希望を記載しておく。
まとめ
エンディングノートは、自分の意思を明確にし家族や医療従事者に伝えるための大切なツールです。終末期の医療において家族に重い決断を迫らせないためにも元気なうちにエンディングノートを作成し、自分の意思をしっかりと伝えておくことが重要です。これにより家族が後悔や葛藤を感じることなく、自分の意思に基づいた医療を受けることができるでしょう。
エンディングノートを通じて、あなた自身と大切な家族が、終末期のリアルを見据えた上で、穏やかな心で過ごせるように準備しておきましょう。
エンディングノートについてご質問や疑問点などあれば、お気軽にお問い合わせください。