農地を宅地などに転用するためには、農地転用許可申請以外にも様々な手続きが必要です。前回は「事前協議」について解説しましたが、今回は道路や水路、そして条例に関する手続きについて詳しく見ていきましょう。
1.道路後退(セットバック)に関する手続き
建物を建てるためには、一般的に4メートル以上の幅の道路が必要となります。そのため、道路に面した農地を転用する場合には、道路後退と呼ばれる手続きを行う必要があります。これは、建物を建てるために必要な敷地を道路側に広げることを意味します。
手続き内容
- 窓口:市役所の道路課や土木課など
- 必要な書類:申請書、土地の測量図、その他
注意点
- この手続きは農地転用許可申請とは直接関係ありませんが、市街化調整区域での都市計画法に基づく許可申請には、道路後退の面積を考慮する必要があります。
- 道路後退には、土地の一部を行政に譲渡する必要があるため、事前に十分な検討が必要です。
2.道路水路占用許可申請
公共物をの一部を占用(使用する)するには、許可が必要です。農地を転用すると、雨水の処理方法を新たに考える必要が生じます。従来、地面に浸透していた雨水が水路に流れ込むようにするため、占用許可申請が必要となります。
手続き内容
- 窓口:道路の場合は市町村の道路課や土木課、水路の場合は市町村の河川課や土木課
- 必要な書類:申請書、占用図、その他
注意点
- 通常であれば許可されますが、農地転用許可申請の過程で、事前に許可を得ておくことが求められる場合があります。
- 水路が市町村の管理ではなく、土地改良区などの管理するものである場合は、その管理者に承諾を得る必要があります。
- 水路への排水路を確保していない転用計画には許可が出ないため、占用許可申請は農地転用許可申請と同時に行うのが基本です。
3.道路・水路帰還する工事の承認申請
道路や水路の工事が必要な場合、以下の内容について承認申請を行う必要があります。
- 側溝の新設
- 水路への橋の架設
手続き内容
- 窓口:道路課、河川課、土木課
- 必要な書類:申請書、工事計画図、その他
注意点
- きちんと計画された側溝などであれば、承認されないことは基本的にありません。
- 水路が市町村の管理でない場合は、管理者との協議が必要です。
4.市町村ごとの条例に関する手続き
農地転用を行う場合は、転用面積が広い場合、市町村の条例に基づく手続きが必要となる場合があります。
手続き内容
- 内容は市町村によって様々
- 窓口:市町村役場
注意点
- 条例では、保水機能や水路の整備による生態系保護、田園などの景観保全などを目的とした様々な規制が設けられている場合があります。
- 転用面積が大きいほど、条例に基づく厳しい審査が行われる可能性があります。
5.生産緑地の買取申出制度
生産緑地を転用する場合には、以下の点に注意する必要があります。
- 生産緑地を転用すると、税制上の優遇措置が受けられなくなる
- 転用には、都道府県知事への申請が必要
手続き内容
- 申請書に必要事項を記入し、都道府県に提出
注意点
- 買い取り申し出制度は、生産緑地特有の制度です。
- 転用前に十分に検討する必要があります。
まとめ
農地転用には、許可申請以外にも様々な手続きが必要です。これらの手続きを事前にしっかりと理解しておくことで、スムーズな転用を実現することができます。
なお、上記の内容は一般的な情報であり、個々の案件によっては異なる場合があります。具体的な手続き内容については、必ず最寄りの市町村役所等でご確認ください。
農地転用に関する手続きは、複雑で煩雑な場合が多いです。そのため、専門家(土地家屋調査士、行政書士など)に相談することをおすすめします。
専門家に相談するメリット
- 必要となる手続きを漏れなく把握できる
- スムーズかつ迅速に手続きを進めることができる
- トラブルを回避できる
農地転用は、関係する法令や手続きが複雑です。
上記を参考に、事前に十分な準備を進め、専門家のサポートも活用しながら、円滑な農地転用を目指しましょう。
この記事が農地転用手続きの参考になれば幸いです。