【外国人と建設業:技能実習制度のリアルと今後の展望】

近年、建設業界では人手不足が深刻な問題となっており、その解消策として外国人材の受け入れが注目を集めています。とりわけ、技能実習制度を活用して現場作業者として外国人を迎えるケースが増加傾向にあります。しかしながら、外国人材の受け入れには多くの検討事項と覚悟が必要です。この記事では、行政書士の視点から、外国人材の導入を検討する際のポイントや注意点について解説いたします。

求めている人材はどの作業に充てるのか

まず最初に考えなければならないのは、「どのような作業に外国人材を充てたいのか」という点です。一般的に、「技術・人文知識・国際業務」(いわゆる技・人・国)と呼ばれる在留資格は、通訳、翻訳、設計、管理などの高度な専門業務に対応しており、建設現場の作業員には適しません。

一方で、現場作業者としての人材を求める場合には、「技能実習」の在留資格が該当します。技能実習制度は、開発途上国の人材が日本で技術を学び、自国の発展に貢献することを目的としています。この制度を活用すれば、外国人を一定期間、現場作業者として受け入れることが可能となります。

技能実習制度の注意点

技能実習制度は非常に有用な制度ですが、すぐに人材を確保できる仕組みではありません。外国人材の受け入れには、監理団体を通じた手続き、現地での選抜、来日前の研修など、さまざまな段階を経る必要があります。したがって、即戦力としての人材確保を目的とする場合には、不向きな制度と言えます。

また、制度の導入には相応の費用が発生します。監理団体への費用、渡航費、住居の確保、生活指導など、トータルで数十万円以上のコストがかかるのが一般的です。さらに、技能実習生には日本人と同等の給与水準が求められるため、経済的な負担は決して軽くありません。

文化とコミュニケーションの壁

外国人材を受け入れる際にもう一つの大きな壁となるのが、文化の違いや言葉の問題です。特に建設現場では、安全管理や作業指示など、迅速かつ正確なコミュニケーションが求められます。言葉の壁がある場合、業務に支障をきたす可能性も否定できません。

また、宗教や食文化、生活習慣などの違いにも配慮が必要です。例えば、豚肉を食べられない、祈りの時間が必要、男女の接触に制限があるなど、多様な文化的背景を理解し、受け入れる姿勢が求められます。職場だけでなく、住環境や日常生活においても、安心して暮らせる環境を整えることが重要です。

技能実習制度のメリット

ここまで読むと、「技能実習制度はハードルが高い」と感じられるかもしれません。しかし、実際に制度を導入した企業からは、「日本人より真面目で、一所懸命に働いてくれる」「すぐに辞めない」「仕事に対する姿勢が素晴らしい」といった声が多く聞かれます。技能実習生は、自国を離れて来日しており、日本での生活や仕事に対するモチベーションが高い傾向があります。

適切な教育と支援を行えば、彼らは企業にとって非常に貴重な戦力となり得ます。単なる労働力としてではなく、「共に働く仲間」として受け入れることで、職場全体の雰囲気も向上することが期待できます。

覚悟を持って取り組むべき制度

技能実習制度は、決して「安価な労働力を簡単に得られる制度」ではありません。むしろ、導入にはコストも手間もかかり、文化や言語の違いに向き合う覚悟が必要です。その一方で、制度をしっかりと理解し、計画的に導入すれば、大きな成果を得ることも可能です。

育成就労制度への移行と今後の展望

今後、技能実習制度は「育成就労制度」へと段階的に移行する予定です。新制度では、より実践的なスキルの習得や、転職の柔軟性が認められるなど、外国人材にとっても日本企業にとっても、より導入しやすい制度設計となる見込みです。

この新制度によって、従来よりも多様な人材を確保しやすくなる一方で、引き続き適切な受け入れ体制の整備と、計画的な対応が求められることに変わりはありません。

まとめ

外国人材の受け入れは「なんとなく」ではうまくいきません。
制度の理解・準備・戦略的な導入が成功の鍵です。

「とりあえず人手不足だから雇う」のではなく、
求める人材像を明確にし、制度の特徴とリスクを理解したうえで、計画的に進めることが重要です。

技能実習制度や育成就労制度は、
日本の建設業界にとって有力な人材確保の選択肢となり得ますが、
企業側にも相応の準備と“覚悟”が求められる制度であることを忘れてはいけません。

この記事が、技能実習制度や育成就労制度についての理解を深める一助となれば幸いです。

行政書士石川将史事務所