【経営・管理ビザ改正2025】常勤職員1名要件とは?誰を雇えばOKか更新目線で整理

在留資在留資格「経営・管理」の改正で、更新実務において特に問い合わせが増えると見込まれるのが「常勤の職員」要件です。改正後は「会社等で1人以上の常勤の職員」を雇用していることが、許可基準として求められます。

ただ、現場では「常勤の職員って正社員じゃないとだめ?」「外国人スタッフでも常勤の職員になれる?」「週何時間なら常勤?」「更新が近い時期に採用しても問題ない?」といった疑問が出やすく、定義と運用が混線しやすいのが実情です。

本記事では、出入国在留管理庁が公表している改正資料・公式Q&Aをもとに、常勤の職員の「対象者」「常勤の判断基準」「NGになりやすい形」「更新時に備えたい資料」を、実務目線でまとめます。

なお、本記事は制度の一般的な整理を目的としたものであり、特定の個別案件について結論を保証するものではありません。判断に迷う場合は、公式資料の確認を早めに行い、必要に応じて専門家へ相談することをおすすめします。

制度・申請場所|「常勤の職員」要件はどこで見られる?どこに出す?

「常勤の職員」要件は、在留資格「経営・管理」の許可基準(上陸基準省令等の改正)として位置づけられています。したがって、新規申請だけでなく、在留期間更新許可申請の審査でも確認対象になります。

更新では、会社の運営実態(実際に事業を回しているか)や、公租公課・労務の履行状況とあわせて、雇用の実態が形式だけでなく実態として存在するかが、整合的に見られやすい論点です。

申請先は、原則として管轄の地方出入国在留管理官署です。更新は基本的に「在留期間更新許可申請」として提出します。提出方法(窓口・郵送・オンライン)は、申請類型や管轄により運用差が出ることがあるため、事前に提出方法を決め、必要資料の準備スケジュールを立てておくと安全です。

改正は施行直後のため、資料の求め方(何をどの粒度で提出するか)は実務の中で固まっていく局面が想定されます。雇用契約書があるだけでなく、勤務実態、雇用保険の手続、給与支払いの状況など、説明の整合性が問われる場面があり得ます。

対象者・条件|誰が「常勤の職員」になれる?常勤の判断基準は?

まず重要なのが「誰を雇えば基準を満たすか」です。公式Q&Aでは、次のように示されています。

  • 許可基準としての「常勤の職員」の対象は、日本人、特別永住者、または法別表第二の在留資格をもって在留する外国人(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)に限られる
  • 法別表第一(就労系など)の在留資格で在留する外国人は、許可基準としての「常勤の職員」の対象にならない

次に「常勤」の判断は、名称(正社員・アルバイト等)よりも勤務実態が中心です。公式Q&Aでは、常勤職員か否かについて、一定の勤務計画の下で毎日所定時間中に従事すること等の一般的事項に加え、待遇面としてパートタイマーと対比しつつ、複数の観点から判断する枠組みが示されています(例:週労働時間、勤務日数、雇用保険の被保険者性など)。

また、雇用形態にも注意が必要です。公式Q&Aでは、「在籍出向」「派遣」「請負」の形態で業務に従事している労働者は、業務に従事している事業所の常勤の職員と見なすことはできない旨が示されています。人手確保の手段として派遣等を使う場面があっても、「許可基準の充足」とは切り分けて設計する必要があります。

なお、「常勤の職員」という言葉は、要件によって意味合いが異なる点に注意が必要です。雇用要件(常勤の職員1名の雇用)では対象者が限定される一方、日本語能力要件では「申請人または常勤職員のいずれか」という形で同じ言葉が使われますが、こちらは雇用要件と同一の対象範囲として説明されていない箇所があります。どの要件の「常勤の職員」の話かを切り分けて確認することが重要です。

必要書類|更新で説明が通りやすい資料の束ね方(実務上の例)

この要件の立証では、「雇用している」だけでなく、「常勤である」ことと「対象者である」ことを、矛盾なく示すことが大切です。雇用契約書(労働条件通知書を含む)は入口になりますが、それ単体では勤務実態の裏付けとして弱く見えることがあります。

更新時に説明が通りやすいよう、次のように目的別に束ねておくと整理しやすくなります(実務上の一例です)。

  • 雇用条件を示す資料:雇用契約書、労働条件通知書、就業規則・賃金規程(ある場合)
  • 勤務実態を示す資料:シフト表、勤怠管理記録、タイムカード等
  • 賃金支払いを示す資料:給与明細、振込記録、賃金台帳
  • 雇用保険に関する資料:被保険者資格取得に関する控え等
  • 対象者を示す資料:外国人の場合は在留カード写し等(日本人の場合は通常不要)

加えて、更新時には労働保険・社会保険・税の履行状況も確認されることが公式資料で示されています。雇用を置く以上、雇用保険・源泉徴収・社会保険の取扱いが整合しているかは説明の骨格に直結します。顧問税理士・社労士と分担している場合は、更新に向けて「どの資料を、いつ、誰が出せるか」を先に棚卸ししておくと、直前対応の負担が減ります。

手続きの流れ|更新を想定した整え方(実務順)

更新を見据えた実務は、次の順で整理すると迷いにくくなります。

  1. 採用前確認:許可基準としての対象者に該当するか(日本人・特別永住者・永住者等)を確認する
  2. 雇用条件の確定:勤務計画、週所定労働時間等が、説明と矛盾しないように設計する
  3. 雇用保険等の手続:手続の時期・内容が、雇用条件と整合するようにする
  4. 勤怠と給与の運用:シフト表・勤怠記録・給与明細・振込記録が連動する状態を作る
  5. 更新直前の棚卸し:提出書類の束ね、不足資料の補完、必要に応じて補足説明書を用意する

よくあるつまずきは、「対象者ではなかった」「繁閑で勤務実態が想定とずれる月がある」「雇用保険の手続が遅れた」「勤怠の記録が残っていない」「給与支払いの証拠が薄い」といったパターンです。制度上は雇用を開始できても、更新時に示せる運用実績が短いと説明が難しくなりやすいため、更新日から逆算して運用期間を確保することが現実的なリスク管理になります。

よくある質問(FAQ)

Q1:常勤の職員はどこで確認されますか?

A1:在留期間更新許可申請の審査の中で、会社の運営実態や履行状況とあわせて確認されます。雇用条件・勤務実態・保険手続などの整合が重要です。管轄や事案により、追加資料の求め方に差が出ることがあります。

Q2:常勤の職員の必要書類は何が中心ですか?

A2:雇用契約書(労働条件通知書)、勤怠記録、給与支払いの証拠、雇用保険に関する資料などが中心です。書類単体より、運用実績として矛盾がないことが重視されます。顧問税理士・社労士と役割分担がある場合は、取得先を事前に整理すると進めやすくなります。

Q3:正社員でないとだめですか?

A3:名称(正社員・アルバイト等)よりも勤務実態を複数の観点から判断する枠組みが示されています。月ごとに勤務が大きく変動する場合は、説明が難しくなりやすいため、雇用条件と運用を整合させることが重要です。

Q4:外国人スタッフでも常勤の職員としてカウントできますか?

A4:許可基準としての「常勤の職員」は、対象となる人の範囲が示されており、就労系在留資格の外国人スタッフのみを雇用している場合は、この要件を満たしたことにはなりません。一方で、日本語能力要件の文脈では「常勤職員」の扱いが同一ではない箇所があるため、どの要件の話かを切り分けて確認してください。

Q5:派遣スタッフを入れていれば常勤の職員として足りますか?

A5:派遣や請負等は、当該事業所の常勤の職員と見なせない旨が示されています。人員確保の手段として派遣を使うこと自体はあり得ますが、許可基準の充足とは別に整理が必要です。

Q6:シフト制で週の勤務時間が上下します。どう考えればいいですか?

A6:勤務実態で判断される以上、安定して基準線を満たす設計が望ましいです。繁閑差が大きい業種ほど、雇用契約と実績の整合(最低保障の考え方など)を先に作ることが重要です。

Q7:更新直前に雇用すれば間に合いますか?

A7:形式上は雇用開始できても、勤務実態・給与支払い・保険手続の履行を示す期間が短くなり、説明資料が薄くなりやすい点に注意が必要です。更新から逆算して運用期間を確保する方が、説明は安定しやすくなります。

Q8:すでに従業員がいます。追加で何を確認すべきですか?

A8:対象者の範囲に該当するか、勤務実態が説明と一致しているか、雇用保険等の手続が整合しているかを確認します。帳票(勤怠・賃金台帳・振込記録)が一貫していると説明がしやすくなります。

Q9:書類が不足しているとどうなりますか?

A9:不足があると追加提出(補正)を求められ、審査が長引いたり説明負担が増えることがあります。不足を後から作って埋めるより、運用記録として揃っている方が説明は安定しやすくなります。

Q10:早めにやるなら、何から着手するとよいですか?

A10:採用前確認(対象者の範囲の確認)、雇用条件の設計、雇用保険等の手続、勤怠・給与の記録の整備を、更新から逆算して進めるのが基本です。会社規模や体制に応じて、補足説明書面を準備するのが有効な場合もあります。

まとめ

第2回では、常勤の職員1名要件を、更新の目線で整理しました。ポイントは、名称(正社員かどうか)ではなく、勤務実態と周辺手続の整合を含めて説明していく論点であることです。

また、常勤の職員として認められる対象者の範囲には注意が必要です。採用前に対象者の確認と雇用条件の設計を行い、勤怠・給与・保険手続の運用記録を積み上げることで、更新時の説明が安定しやすくなります。

次回(第3回)は、誤解が多い「資本金等3,000万円」について、法人と個人事業で何が違うのか、合算不可の考え方、増資に関する実務上の確認事項を整理する予定です。

参考情報

制度の整理はできても、ご自身の在留期限や事業内容に当てはめると判断に迷うことも少なくありません。不安な点があれば、早めに確認しておくことで、更新時の対応を落ち着いて進めやすくなります。