退去強制手続きとは?行政書士ができること・できないこと

「入管から呼び出しがあった」「家族が突然収容されそうだ」
そんなとき、どう対応すればよいのでしょうか?

この記事では、外国人本人だけでなく、その方を雇用している事業者や経営者の立場からも、「退去強制手続き」や「在留資格」の適正管理についてわかりやすく解説します。
「実は、うちの外国人が…」と気づいても、今さら言いにくい…と放置するのではなく、今こそ適切に対応するべきタイミングです。

退去強制手続きの全体像

外国人の方が、在留資格の条件に違反していたり、不法残留(オーバーステイ)状態になっていた場合、退去強制手続きに進むことになります。
手続きの流れは以下のようです。

  1. 入国管理局による違反調査
  2. 違反内容に基づく審査(審判)
  3. 退去強制令書の発布(または退去命令)
  4. 収容・送還(強制退去)

このうち、「退去強制令書」が発布される前であれば、行政書士として支援できる余地があります。

退去命令と退去強制令書の違い

退去命令は、不法残留など比較的軽微な違反に対して出され、自主的に出国すれば再入国禁止期間が短縮される可能性があります。
一方、退去強制令書は重大な違反(不法就労、刑罰歴など)に対して出され、原則として5〜10年の再入国禁止となります。

退去命令制度とは?

自発的な出頭・帰国で再入国禁止期間が短縮される可能性

不法残留(オーバーステイ)状態の外国人であっても、自ら入管に出頭し、退去命令制度を利用することで、再入国禁止期間が短縮される可能性があります。

退去命令制度は、不法残留以外の重大な違反がない方が対象で、自費での出国を条件とする制度です。
この制度を利用すれば、通常5年の再入国禁止期間が原則1年に短縮されます。

ただし、不法就労歴がある場合や刑罰を受けたことがある場合などは、この制度の対象外となり、退去強制令書が発布され、5~10年の再入国禁止となります。

退去命令制度を利用できるかどうかは、出頭前に慎重に確認する必要があります。
「まだ退去令が出ていない」「在留資格に不安がある」という段階であれば、行政書士が出頭前のリスク確認や資料準備をサポートできます。

詳しくは ▶ 退去強制Q&Aまとめ もご参照ください。

再入国禁止(上陸拒否)期間の目安

退去命令や退去強制の内容によって、再入国禁止となる期間(上陸拒否期間)は異なります。以下に代表的なケースをまとめました。

違反内容上陸拒否期間
退去命令を受けて出国した者(初回)1年
退去命令を受けて出国した者(再度)5年
退去強制を受けた者(初回)5年
退去強制を受けた者(再度)10年

※上記は一般的なケースであり、個別の事情によって異なる場合があります。

行政書士にできること(退去令発布前)

退去強制手続きが始まる前であれば、行政書士は以下のような支援が可能です。

  • 在留特別許可に向けた理由書の作成
  • 生活実態や家族状況を示す証拠資料の整備
  • 仮放免許可申請のサポート(収容前)
  • 入管への提出資料の作成、提出
  • 在留資格の見直しに向けた相談支援

収容前の段階であれば、まだ手段があります。
特に、不法残留かもしれない、資格外活動をしていたかもしれないという段階での相談は、後の重大な結果を回避する第一歩になります。

在留資格を確認していますか?

「外国人従業員が就労ビザで働いていると思っていたけど、仕事内容が違うかも…」
「期限切れの在留カードで働いていたことが判明した…」
そんなとき、「知らなかった」では済まされません。

不法就労助長罪という刑事罰があるように、企業・雇用主側にも法的な責任が問われる可能性があります。
知らなかったことよりも、「知っていながら放置していた」ことの方が重く見られるのです。

気になることがあるなら、今のうちに確認し、必要であれば早めに対処しましょう。
社内で在留資格に不安がある外国人を見かけたら、やさしく声をかけ、専門家への相談を促すことも、経営者・管理職の責任の一つです。

行政書士にできないこと(退去令発布後)

退去強制令書がすでに発布された場合や収容された場合、行政書士が行える支援は限られます。この段階では、法的な争いとなり、弁護士による対応が必要となります。

具体的には、退去強制令書発布後に新たな事情が生じた場合の「再審情願」の申立てや、退去強制令書の取消を求める「行政訴訟」の提起などが考えられます。これらの手続きは、弁護士の専門分野となります。

したがって、退去強制令書が発布された後の対応については、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ

早期対応がカギ。本人・雇用主ともに冷静に対処を

退去強制のリスクは、本人だけでなく、家族、企業、地域社会にも影響します。
だからこそ、早期発見・早期対応が最も重要です。

退去や収容という結果を防ぐためには、早めに相談し、状況を整理することが大切です。ご本人だけでなく、ご家族や雇用主の方からのご相談もお受けしています。

ご相談はお気軽にどうぞ

次回は、「収容と仮放免とは?」について解説します。